When I was seventeen

"Oh! May girls be happy."とは、わたしが通った女子校のいわばスローガンのようなもので、夏の文化祭のポスターなんかによく書かれたりしていた。なんでこんな言葉が?と不思議に思われるかもしれないが、あんまり詳しく書くと身バレしそうなので深く追及はしないでおく。

そう、女子校。わたしは高校時代女子校に通っていた。と言うと「えっみかげちゃんが!?男の子でも女の子でもあんなにフランクに楽しそうに話せるコミュ力おばけのみかげちゃんが!?!??」と言われることもあったけれど、それはわたしがたまたま同性異性を問わず畏怖の念を抱かない女子校出身の女性だからだという話で、つまり女子校の女子高生に関するステレオタイプは必ずしも女子校の女子高生全員に当てはまるわけではないというわけだ。当たり前だけれども。

わたしの全盛期はその女子校でセーラー服を纏って過ごした17歳の頃だったと思う。普通に過ごしていれば男子高校生とは全く縁もゆかりもない生活を送るわけだから恋愛経験には乏しかったが、まあそれでも多感な時期ゆえ色々と挑戦しては失敗を繰り返したり(つまり片思いの連続であった)、今思い返してみると懐かしいやら恥ずかしいやらである。恋愛でおいしい思いをすることができなかったわたしは「ああ、わたしってモテないんだな」「慎ましく生きよう」「ブスは黙れよ」等々自分に言い聞かせて大学に入ったのだが、その後自分の意に反して恋愛にまつわる様々な珍事件が起こったので人生というのは何が起こるのか本当によくわからない。今となっては17歳の自分の肩をぽんとたたき「まあ、焦るなよ」の一言でもかけてやりたい気分である。そのままジタバタしていれば数年後にジャニーズ系の爽やかイケメンと付き合うことになったりしなくもなくなくなくない!?!??

…さて、そんなわけで恋愛においてはしょぼんな感じの17歳だったわけだが、肉体的にはまさしく全盛期だった。当時のわたしといえば髪の毛はつやつやのさらさらセミロングで、身長も167センチとそこそこに高く、ほどほどに痩せており、加えて脚が結構長かった。今となっては見る影もないが、当時は周りのイケイケ女子に「……あれ、さくらい氏、スタイル良くね?」と言わしめていたほどである。脳みその方もフル回転させていたようで、定期試験も毎回10番台だったし、英語に関して言えば必ず学年トップ争いにくいこんでいた。それで一応部活もやっていたので、私にしてはまあまあ頑張っていたと思う。

そんな時代、笑ったり泣いたりムカついたり毎日めまぐるしくキラキラしていた日々、が確かにあったのだと思った。『17歳だった!』の読後感はそういったものだった。わたしは読書感想文とか、そもそも文章を書くのが上手じゃないのであまりうまく言えないのだけれど……必ずしも同じ時代を生きていなくとも、同じ事件を体験していなくとも、17歳という通過点で感じるものは人間が人間として感じるものなのだなあと、そしてそれは17歳特有の未熟で清々しい何かなのだなあと、そう思った。

わたしのどうでもいい昔話ばかりになって申し訳ないが、17歳のときの思い出として絶対に忘れられないなあと思うのが、音楽の授業の最終試験である。ど田舎の、ではあるが進学校に通っていたので音楽の授業は2年までで終わりだった。それで冬に最終試験をすることになったのだが、先生いわく「何をやってもよい。リコーダーを吹くでも演歌を歌うでもよい」とのことだったので、ロックバンドかぶれだったわたしはすぐさま「ギターで弾き語りやりたい!!」となった。その欲望自体はいいとして、問題は弾き語りをするどころかアコギさえ持っていない弾いたこともない状態だったということだ。つまりは超のつく初心者だったのである。ちなみに音楽の先生には「今からァ?」と渋い顔をされた。準備期間はおそらく一ヶ月ほどだったし当然だと思う。しかしどうしてもやりたかったのだ。歌については合唱部だったので問題ないと判断した。アコギを買おう。簡単なコード3つくらい覚えれば弾けるでしょ。と根拠のない自信を根拠にすぐさまアコギを買い練習を始めるのだが、これが予想に反してなかなかに楽しかった。ギターにおける才能があったわけではなく、憧れのギターを買ったこと、それを弾けること、が純粋に嬉しかったのである。嬉しくて嬉しくて暇さえあれば毎日練習した。背負って学校に持って行くときは誇らしかった。興味のない人にとってはたかがギターなのだがわたしにとっては宝物だった。それさえあればどこにでもいける気がしたのだ。なぜなら17歳だから!

そうして迎えた本番、手は震えるし声も震えて、せいぜい30人くらいの前で歌うだけなのにうまくいかなくて……それでも必死に気持ちを乗せて歌い上げ、最後のコードをじゃかじゃんと掻き鳴らした途端にワッと歓声が上がり大きな拍手をもらった。ライブにやみつきになるミュージシャンの気持ちとはああいうものだろうか。あのときのなんとも言えない嬉しい気持ちは今後二度と味わえそうにないと思う。

…と、めまぐるしい青春の日々を走馬灯のように思い出すことができたのもひとえに読書のおかげである。恥ずかしながら本を読んだのは久しぶりだったが非常に楽しむことができ、その証拠に声に出して笑う場面も多々あった。というか声に出して笑う内容で丸々一冊構成されたような本だった。頂き物の本だったので、なんとなく本と贈り主とが重なるような気も……。と言ったら怒られちゃうかな。でも、本から滲み出る愛おしさのようなものと、贈り主に対して抱くどこか温かいような気持ちと、通じるところがあるように思ったのです。なあんて、偉そうに言う資格はわたしにはさらっさらないのですが。所詮は若輩者の戯言なので、なにとぞ、なにとぞ。

 

十七歳だった! (集英社文庫)

十七歳だった! (集英社文庫)