いるもの、いらないもの

片付けが苦手だ。気づくと物が増えている。増えたものはなかなか捨てられない。あれもこれもいつか使う日がくるのでは…?と思ってしまう。よくスーパーの袋とかケーキについてくるスプーンだのフォークだの丁寧にいちいち取っておく人がいるが、わたしはおそらくそういうタイプの人間だ。だって勿体無いジャン!まだ使えるジャン!折角お金出したんだモン!と、貧乏根性も相まってどんどん物が積み上げられてゆく。

そんなんだから部屋は放っておくとたちまちゴミ屋敷と化す。今住んでいる部屋だって例外ではない。どうせ半年の仮住まい、そこまで物も多くはなるまいと思っていたのも束の間。ここに越してきた当初はすっきりきれいだったのに、今や部屋のあちこちにわたしの私物が散乱している。わたしより長く暮らしているのにまったく物を増やさず部屋を占拠することのないルームメイトに申し訳が立たない。

ところでデブな人間というのは得てして片付けが苦手であることが多い。要因は様々考えられるが、自分の体の余計なものを減らせないのも自分の部屋にある物を減らせないのも同じ原理がはたらいている気がする。だって勿体無いジャン!と言いながら余計なものまで食べたり、まだ食べられるジャン!と言いながら賞味期限切れの食品を慌てて食べたり、本来買うべきではなかったにも関わらずついつい買ってしまったお菓子を折角お金出したんだモン!を言い訳に食べてしまったり。食べてばっかりである。最近のわたしかよ。デブまっしぐらかよ。

家によほど大きな鏡でもなければ自分の体をまじまじチェックする機会なんてないと思うのだけど、だからこそ普段は自分の体を現実のものとして認識する機会が少ない。ゆえに自分VS自分の戦いは休戦しがちである。だって対峙する機会がそもそも無いんだもの。でもたまに戦が勃発するときがある。洋服を試着するときである。あの狭い個室にある大きな鏡に映る下着姿の自分を見ると大体あちゃーと思い、次にやばいなと戦慄する。試着しようともってきた服が案外似合わなかったときなんかは嫌な予感が全身をかけめぐる。「マネキンが着ると、あんなにかわいいのに…」ふと目をやると体のあちこちにはちきれんばかりの肉、肉、肉。いや脂肪、脂肪、脂肪か?どちらでもいい。いやよくないけど。とにもかくにも、余分なものが体についているのだ!つまり太っているということだ!折角ルンルン気分でショッピングを楽しんでいたのに、これではテンションが下がりまくりである。がしかし、それも自分のせいと思えば仕方が無い。いかがでしたかー?と笑顔で尋ねてくる店員さんに対し「あの、その、ちょっとイメージと違って」などと適当にごまかしながら洋服を元の位置に戻しにいく。イメージと違ったのは洋服ではない、自分の体型である。とほほ…と思いつつ、何も買わずに帰路につく。

帰宅後は実にn回目のダイエット宣言をするのだが、その決意はどこへやら、気づくとわたしは映画館でポップコーンをぽりぽりやっていた。アメリカのポップコーンはすごい。量が多いのはさることながら、自分でプラスアルファのトッピングができたりしちゃうのである。塩や砂糖、香辛料、そして一番驚いたのは溶かしバターだ。専用のポンプを押すと透明なアブラがたらたらと流れ出てきて、そいつでポップコーンをしみしみにしたあと砂糖やら塩やらをふりかけて食べるらしい。試してみたが、普通のポップコーンとは違いじゅわーと香ばしくいかにも…こう…太りそうな味である。あれ、ところでダイエットは?バター付きポップコーンを次々口へ運ぶわたしの頭の中には定番のあの台詞、「ちょっとぐらいならいいよね…」が浮かんでいる。甘々である。そんなふうだから一向に体も部屋の中もスッキリしないのだ。翌朝、心無しか一回り顔の大きくなっている自分を鏡の中に発見し青ざめる。そんなことを今まで何度繰り返しただろう。打破すべきわたしの日常。

明日から朝は早起きしてジョギングしよう。部屋も少しずつ片付けよう。いるもの、いらないものをちゃんと整理整頓して、部屋も体もすっきり…なんてサクセスストーリーを今度こそ。n+1回目の挑戦を始めるべく、わたしは「もったいない」「早く食べきって明日食べないようにしなきゃ」と映画の残りのポップコーンをぽりぽりやりながら、その発想こそがデブにつながるのだとは思いもよらないまま、このブログを書いているのでした。